耳の症状・病気

急性中耳炎

高頻度でお子さんが罹患する病気です。
日本での正確な頻度は不明ですが、海外では1歳までに60%、3歳までに80%のお子さんが一度は罹患すると言われています。

耳の穴からばい菌が侵入するイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、鼻と耳とを繋ぐ耳管という管を介して上咽頭(鼻の穴の突き当たり)のばい菌が鼓膜の奥に入り炎症を起こします。ですので、鼻の調子が悪いお子さんが急に熱を出したら急性中耳炎を疑う必要があります。

程度に応じて抗菌薬の投与、鼓膜切開などの治療が必要となります。抗菌薬は中耳炎の原因となりやすいばい菌の種類を見据えて適切に選択する必要があります。

熱が下がったり、痛みが和らいだりすると薬を飲むことをやめたくなるかもしれませんが、しっかりと炎症を抑えておかないと、すぐにまた悪くなったり反復したりする危険がありますので、処方された通りに服薬してください。


反復性中耳炎

急性中耳炎が一度治ったのにまたぶりかえす、滲出性中耳炎が治らずに悪化して急性中耳炎に移行するなど、色々な原因がありますが、半年に3回以上、急性中耳炎に罹患すると反復性中耳炎と言われます。

一生の中で一番免疫力が低い時期である2歳未満のお子さんに多く見られます。抗菌薬が効きにくいばい菌が増えたことが主な原因と考えられますが、他の原因としては集団保育、受動喫煙などがリスクを増すことも言われています。

抗菌薬以外の治療として、漢方薬の使用、鼓膜チューブを挿入する手術などの有用性が報告されています。

どの方法が一番良さそうなのか、皆様と相談しながら治療の方針を定めてまいります。


滲出性中耳炎

鼻と耳を繋ぐ耳管の働きが低下することで、鼓膜の奥のスペース(ここを中耳といいます)の空気の流れが悪くなり、鼓膜の張りが悪くなったり浸出液が溜まったりします。

痛みや発熱などを来すことはほとんどありませんが、鼓膜の動きが悪くなるため聞こえが悪くなります。主にお子さんがかかりやすい病気ですが、大人の方でもかかることがあります。

滲出性中耳炎を放置することでさらに重症度の高い中耳炎になり、難聴の後遺症を残すことが時々あります。

また、耳から入ってくる言葉を覚えることでお子様の成長が促されるわけですから、なるべく良いコンディションで学んでいただくためにも、きちんと治療をするべきであると考えます。

粘膜の調子を整える薬での治療が一般的ですが、治療が長引く場合には鼓膜切開術やチューブを挿入する手術を行うこともあります。


耳垢(耳あか)

日本人の耳垢の約70%は乾いた耳垢で、30%の方が湿っていると言われています。欧米人では逆に湿った耳垢の人が多数だと言われており、アメリカでは綿棒などでの耳掃除を原則として禁止するような推奨がなされています。乾いた耳垢の場合は特に耳掃除を行わなくても勝手に排出されると言われています。

とはいえ、適宜ご自宅で耳掃除を行うことは多いと思います。そこで耳掃除をするにあたり注意点が二つほどあります。

①頻繁にはやり過ぎない。
耳垢には繊細な耳の穴の皮膚を守る役割があります。また雑菌の繁殖を抑える役割もあります。ですので、耳垢を取りすぎることで、これらのバリアの働きがなくなり外耳道炎を来しやすくなります。
適切な頻度は人によってそれぞれですが、目安として1ヶ月に1度くらいで十分であることがほとんどかと思います。

②奥まで頑張り過ぎない。
外耳道(耳の穴)の奥の方、鼓膜の付近は骨部外耳道と言われ頭蓋骨に皮膚が張ってあるだけの状態です。耳垢はそれよりも手前の部分からのみ発生します。
ですので耳掃除は見える範囲のみ、目安としては1cm程度のみに留めておき、深追いは禁物です。特に湿った耳垢の人が綿棒を用いて耳掃除をした結果、奥の方に耳垢を押し込んでしまい、耳鼻咽喉科で一生懸命処置をしないと取れなくなってしまうことがあります。


加齢による難聴

個人差はありますが、加齢により聞こえが悪くなることは皆さんご存知かと思います。

両側の耳がほとんど同じ程度の影響を受けること、高い音がより聞こえにくくなる特徴があります。高い音が聞こえにくくなると「音は聞こえるけど言葉が聞き取りづらい」という症状が出やすくなります。

言葉は母音と子音で成り立っていますが、子音の判別には高い音の聞こえが重要だからです。特にカ行、サ行、ハ行の聞き取りが難しくなりやすい傾向があります。

耳が遠くなった方に対して耳元で大きな声で話しかける光景を目にすることがありますが、これはお勧めではありません。

意外と知られていませんが、耳が遠くなった方でも通常の方同様に、大きすぎる音はうるさく感じます。ですので「大きすぎない声でゆっくりと」話しかけることがコツです。


補聴器

どの程度の難聴で、どの程度お困りになるかは人それぞれですので、補聴器を必要とする定まった基準というものはありません。

難聴には中耳炎、耳垢、一部の突発性難聴などのように治療によって改善する見込みのあるものと、加齢による難聴のように残念ながら現在の医学では治療の方法がないものがあります。原則として他に治療法がなく、日常の会話などで支障を来す状況であれば補聴器を考慮することになります。まずは治療の方法がないかどうかを耳鼻咽喉科での診察を受けていただくことが重要です。

よく、聴力に左右差がある場合で悪い方の耳に補聴器をするのはどうでしょう、との質問を受けることがありますが、良い方の耳で日常会話が成り立つのであれば、悪い方の耳に補聴器を装用してもあまりメリットが生じにくいのでお勧めいたしません。


めまい

急に周囲の景色がグルグル回るようで同じ方向に引き込まれそうな感じになる、上にあるものを取ろうとしたり首を後ろにそらしたりすると一瞬クラッとする、歩行するとフラフラしてまっすぐ歩けない、など色々な症状が「めまい」の一語に集約されています。

当院でのめまいの診療には、ご本人からどのような状況で、どのようなめまいが生じたのかを詳しくお聞きすることを重要視しています。

診察を行う上で最も重要な情報が得られる検査が眼振(がんしん)検査です。内耳の機能に異常があると眼振という独特の眼球運動が観察されます。当院では原則として、この眼振を録画して皆様にご覧に入れながら、分かりやすい説明を意識しています。

治療には血流を良くする薬、吐き気を軽くする薬、漢方薬などを内服していただいたり、重症例では点滴を行ったりすることがあります。

また、経過が長く遷延しているような場合では、 御自宅でも行えるようなリハビリテーションの説明を行います。